この日本語訳をナレーションにしたものがこちらです。
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私の名前はジョン・ミアシャイマーで、シカゴ大学で教えています。
専門は国際関係論です。
今日は、ジュリアン・アサンジ事件について少しお話したいと思います。
アサンジ氏が、アメリカ政府から起訴され、裁判を受けるために、アメリカに身柄を引き渡すかどうかについて、イギリスの高等裁判所がまもなく決定を下します。
私は裁判所に対し、アサンジ氏の身柄を引き渡さず、自由の身とすることを求めています。
そうすることは当然だと私は確信しています。
その理由を説明させて下さい。
この事件は、様々な種類の機密文書に関わるものでした。
政府職員だったチェルシーマニングが、機密文書や私文書を公開する有名なウェブサイトである「ウィキリークス」の運営者であったジュリアンアサンジに、それらの文書をリークしたのです。
そのリークがなければ、それらの機密文書は日の目を見ることはありませんでした。
マニングが逮捕され、処罰されたのは、彼女が政府職員であり、機密文書をアサンジにリークするという違法行為を行ったからです。
しかし、アサンジはジャーナリストであり、法を犯していません。
ジャーナリストが政府関係者から渡された機密情報を公表することはよくあることです。
もしアメリカのジャーナリストが機密情報を公開したことで刑務所に送られたとしたら、ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙といったアメリカで最も有名な新聞社に所属する記者の多くが刑務所に収監されることになるでしょう。
もちろん、そのようなことはほとんど起こったことはありません。
簡単に言えば、新聞記者が機密資料を公表したからといって、刑務所に入るようなことはほとんどないということです。
なぜでしょうか?
なぜ逮捕されないのでしょうか?
アメリカやイギリスのような自由民主主義国家も含めてあらゆるタイプの政府が、その行動や政策を国民の目から隠すために、時として大変な努力をします。
その結果、国民が政府の行動を評価したり批判したりすることはほとんど不可能になります。
しかし、政府が時に愚かで無謀な行動をすることを考えれば、これは良い状況とはいえません。
そのため米国では、内部関係者が機密にされている政策をジャーナリストにリークし、ジャーナリストがその情報を公表することで、国民がその情報を評価し、誤った政策には強く反発するという豊かな伝統が長い時間をかけて育まれてきたのです。
このことに当てはまる最も有名な事例は、有名なペンタゴン・ペーパーズです。
それは、1964年から1965年にかけてアメリカがベトナム戦争に参戦することを決定し、その後数年間、戦争をエスカレートさせていったことについて研究した複数巻から成る文書でした。
機密文書にアクセスできた政府内部関係者だったダニエル・エルズバーグは、1971年にこの文書をニューヨーク・タイムズ紙にリークし、その後ニューヨーク・タイムズ紙はこの文書を公表しました。
その文書に書かれた内容は、ジョンソン政権がベトナム政策についてアメリカ国民に語っていた内容と大きく食い違うものでした。
機密文書を公開することによって、エルズバーグとニューヨーク・タイムズ紙は、社会全般に対して、その当時、重要な貢献を行い、その良い影響は今も残っています。
彼らは、政府の政策が破綻していること暴露し、アメリカ政府が勝ち目のない戦争を続けていることを明るみにしたのです。
当時、エルズバーグは刑務所に送られるかもしれないと思われていましたが。
機密情報を漏洩したにもかかわらず、彼は刑務所には入りませんでした。
ニューヨーク・タイムズ』紙の記者は誰も刑務所に行きませんでした。
なぜなら、アメリカでは機密情報を公表したからといって、ジャーナリストが刑務所に行くことはないからです。
ジュリアン・アサンジの場合、彼は情報を漏洩した内部関係者ではなかったので、エルズバーグと同等ではないことに留意して下さい。
チェルシー・マニングは、内部関係者でした。
アサンジはニューヨーク・タイムズ紙と同じ立場だということです。
従って、彼は送還され、米国で裁判にかけられるべきではありません。
当然のことですが、政府の指導者たちは漏洩されるのを嫌がります。
自分たちで漏洩する場合は別ですが。
そのため、漏洩した者を罰する傾向が強いです。
だから、アサンジのように、機密情報を公表したジャーナリストを処罰しようとすることさえあります。
政府が漏洩した人を追及するのは公正な行為です。
しかし、政府がジャーナリストを追及することは許されません。
実際、そのようなことをすれば、政府を監視し、政府が誤った政策を追求した時にその責任を追及するために不可欠な報道の自由を直接壊すことになります。
実際、米国政府がアサンジを獄中に追い込もうとする主な理由のひとつは、彼が米国の政策立案者の不正を暴露したからです。
私の考えでは、それは全て良いことであり、米国のような自由民主主義国家を可能な限り効率的かつ賢く機能させるために不可欠なことです。
最後に2点
まず強調しておきたいのは、アサンジが公開した文書によって、誰も怪我をしなかったということです。
彼がウィキリークスに投稿したことで、命が危険にさらされた人はいません。
そして誰も殺されていないことは確かです。
アサンジがやったことで、多くのアメリカの政策立案者の誤った行動が暴かれたことは確かです。
それは全て良いことだと私は思います。
第二に、アサンジはすでにその行為に対して大きな代償を払っています。
彼は事実上、何年も刑務所にいました。
彼が米国に送られ、そこで有罪判決を受け、長期の実刑判決を受ける可能性が高いということは、残酷で異常です。
以上の理由から、私は英国高等裁判所に対し、アサンジを米国に送還しないよう謹んでお願い申し上げます。
そうすることが正しい判断であることは明らかだからです。
ありがとうございました。
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