さて、中心的な問題に移りましょう。
暴力の可能性に対処するために、政治はどうあるべきなのかということです。
暴力の可能性とはどういう意味なのかを説明しましょう。
実際に、カトリックとプロテスタントは、イギリスだけでなくヨーロッパ中ですさまじい殺し合いをしていました。
今日、シーア派とスンニ派が互いに殺し合うのは、シーア派とスンニ派のどちらが正しいイスラム教の解釈なのか意見が一致しないからです。
共産主義者とリベラル派でも、どちらが正しいのかについては、意見が一致しません。
何が正しいのかについて意見が一致しないとき、その原理を強く信奉していれば、暴力が起こる可能性があります。
だから、場合によっては、意見が一致するかもしれないが、普遍的に一致するわけではない、そのような人たちが、活発に意見を主張するようになれば、暴力の可能性は非常に大きくなるのです。
つまり、リベラリズムは基本的に対立に基づくイデオロギーである、ということです。
そして問題は、その対立をどう解決するかということです。
3つの解決策があります。
そして、これらは皆さんの心にも、深く刻まれているはずです。
1つ目は、個人の権利を重視することです。
個人の重要性を思い出して見て下さい。
生命、自由、幸福の追求を謳った独立宣言をご存知でしょう。
これらは自然権です、
つまり、これらは、侵されてはならない、不可侵の権利です。
これは、地球上のすべての人が、これらの権利(自由と定義されることもある)を持っていることを意味します。
つまり、あなたがプロテスタントになりたければ、その宗教を実践する権利があるし、
もしわたくしが、カトリック教徒になりたければ、わたくしには、その自由があり、カトリック教徒になる権利がある、ということです。
最も重要な事は、誰もがこうした選択の自由を持っていることを認めることです。
このことから考えれば、カトリック教徒がプロテスタント教徒を殺すことは、完全に理にかなっています。
あるいはユダヤ人がイスラム教徒を殺したり、無神論者が宗教の信者を殺したり、共産主義者が、自分と対立する考え方を持っている集団を殺すことも、理にかなっています。
要するに、個人を重視し、個人がどのような人生を送りたいかを自分で選択させることを重視するということです。。
可能な限り、その人なりの良い人生を歩んでもらいたい、ということです。
そして、とても重要なことは、地球上のすべての人にその権利があるということです。
この後で説明することを少し先に話してしまいましたが、今言ったことを頭の片隅に置いておいて下さい。
個人主義と不可侵の権利に焦点を当てれば、個人主義的なイデオロギーから普遍主義的なイデオロギーへと、ほぼ自動的に移行するのです。
なぜなら、個人を重視し、地球上のすべての個人に権利があると言っているからです。
個人主義的イデオロギーが、普遍主義的イデオロギーになる、ということです。
しかし、とりあえず、今話しているのは、個人の次元での話です。
リベラリズムから生じる暴力の問題を解決する2つ目の方法は、寛容を重視する、ということです。
アメリカ人は、絶えず、寛容について話題にします。
大学では寛容を重んじます。
気に入らない意見であっても、許容するのが当然ということになっています。
例えば、外部から講演者を招いたり、非難されるようなことを言う講演者でも、許容したりするわけですよね?
寛容さは本当に重要です。
しかし実際には、寛容さだけでは限界があるのです。
たとえば、中絶は殺人だと信じている人は、中絶を行う医師を殺すこともいといません。、
だから国家が必要になるのです。
それが、リベラルズムから生じる暴力の問題に対する3つ目の解決策です。
プロテスタントとして生きたい人たちが、カトリックとして生きたい人たちを攻撃しないように、あるいはその逆がないように、事実上、夜警のような国家が必要になるのです。
この3つが、リベラリズムから生じる暴力の問題に対する解決策なのです。
これがアメリカという国の本質です。
アメリカ人は、個人主義について、いつも話しています。
アメリカ人は、権利について語り、すべての人に権利があるとよく言います。
自分の子供たちに、「これをしろ、あれをしろ」と言うと、「子供にも権利があり、親であっても、その権利を邪魔することはできないんだ」といつも言ってきたことを思い出します。
アメリカ人は、小さい頃から、そのような教育を受けているのです。
そしてもちろん、私たちは、驚くほど寛容な国民です。
しかし、寛容性は完全ではありません。
だからこそ国家が必要になるのです。
警察を持ち、裁判制度を持たなければならなくなるのです。
自由主義とはそういうものです、
個人を重視し、寛容を重視し、夜警のような国家が必要だという事実を受け入れること。
これが、リベラリズムなのです。
※続き
③ナショナリズムとは?
→日本語訳
この訳に基づいて製作された動画はこちらです(関連写真も入れているので理解の一助になります)。
※この講演は、下記の著作の内容に基づいています。
●日本語訳一覧