2018年にテキサスA&M大学で行われたミアシャイマー教授の講演の全訳です(全訳一覧はこのページの下部)1。
元動画はこちら
これを日本語のナレーションに直して、関連写真を加えて動画にしたものはこちらです。
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この講演の内容は、アメリカの外交政策であるリベラル覇権主義を分析、批判するというものです。
それは同時に、「何が米外交を動かしているのか?」や「NWO(ニューワールドオーダー)の実態」を説明する内容にもなっているので、資本家やネオコンが米外交を動かしていると主張している陰謀論者に対する論駁にもなっています。
そして、この講演の内容は、2018年に出版された「The Great Delusion」に沿ったものになっています。
一部を意訳しています。また、説明が足りないと思った部分(①リベラリズムとは何か?)については、他の講演での発言をつけ加えています。
※補足説明
ミアシャイマー教授の発言について、補足します。
・トランプが当選した理由について
「アメリカの外交政策の失敗がドナルド・トランプを当選させる一助になったのです。これが、どうしてこんな男がアメリカの大統領に選ばれたのだろうとおっしゃる方々に対する説明になります。」 この講演の後に行われた質疑応答の中で、この発言の真意を問われたミアシャイマーは、「トランプが大統領に当選した理由として大きいのは、外交政策の問題よりも、内政問題だった(外交政策の失敗が大統領当選の主な理由であるとは言っていない)。アメリカの有権者の多くは、国外の問題よりも国内の問題に関心があるから。」と説明しています。それを踏まえて、「アメリカの外交政策の失敗がドナルド・トランプを当選させる”一助”になったのです。」という訳にしました。
・「アメリカは、ナショナリズムとリベラリズムの両方が強い国」という意味について
ミアシャイマー教授は、他のインタヴューで、「リベラリズムは国民同士を引き離す作用があるが、ナショナリズムは国民を結束させる作用がある。だから、リベラリズムとナショナリズムはセットにする必要がある。アメリカはリベラルなナショナリズム国家」という趣旨の発言をしていました。 から言えることは、リベラリズムの国においては、国をバラバラにしないためには、ナショナリズムを強める必要があるということです。 ナショナリズムとリベラリズムは対立する概念なので、それを考えると、その二つが同時に存在するアメリカというのは、矛盾を抱えているように思えるかもしれませんが、このように理解すると、この二つの関係性が理解しやすくなるのではないでしょうか?
・「ナショナリズムとリベラリズムが混在する矛盾」について
「人間は社会的動物であると考えるナショナリズム」と「人間は、(国家と)社会契約を結ぶ個人であると考えるリベラリズム」がアメリカに同時に存在するという矛盾については、社会的動物である人間を啓蒙して、社会契約を結ぶ個人へと進歩させるという進歩主義の考え方があると考えれば、矛盾がなくなるのではないでしょうか?
・「Illiberal Liberalism」という矛盾について
Illiberal Liberalismという矛盾は、アメリカが世界を統一(平定)するまでの過程における限定的(一時的)なものであると考えれば、矛盾がないと言えるではないかと思います。
●日本語訳一覧