④リベラル覇権主義とは?(The Great Delusion with Professor John Mearsheimer ミアシャイマー 全訳)

では、リベラルの覇権主義とは何なのでしょうか?
リベラリズムの定義と、私が考えたナショナリズムの定義を説明しました。
リベラルな覇権主義について少しお話ししましょう。
リベラルな覇権主義とは、基本的に世界をアメリカのイメージに作り変えようとする試みであり、3つの要素があります。

一つ目は、リベラルな民主主義を世界中に広めることです。
3つ星を付けたのは、この3つの中で最も重要だからです。
これは、すべての国を自由民主主義国家にしたいという考えです。
地球上のすべての国が、ここ米国と同じ政治システムを持つようにしたいのです。
第二の目標は、より多くの国々を開かれた国際経済に統合することです。
ここでは自由貿易、多くの経済交流、自由な資本移動などに重点を置いています。
そして3つ目は、WTO、IMF、NATO、NATOの拡大、TPPのような国際機関に、より多くの国々を統合することです。
リベラル派は制度を重視するのです。
開かれた国際経済を重視し、最も重要なのは民主主義を広めることです。
ドナルド・トランプはリベラルな覇権主義に対抗して出馬したのです。
そしてリベラルな覇権主義は、はっきり言えば、共和党と民主党の両方によって支持されていました。
共和党は特にそうだが、民主党も外交政策に関して両党の間には大きな違いがあるという主張をしたがります。
しかし、これは冗談のような議論です。
両党は双子のようなものです。
共和党と民主党にはほとんど違いがありません。
ドナルド・トランプと両党の間には本当に違いがあります。
ドナルド・トランプは、共和党の予備選挙では何十年もの間、共和党の外交政策を批判してきたことによって勝ち、
総選挙では民主党の外交政策をを批判することで、選挙に勝ったことは、両党の外交政策には違いがないということを意味しているのです。
ドナルド・トランプは「リベラルな民主主義を世界に広めることに興味はありません。
そして実際、トランプは独裁者と仲良くすることに非常に満足していました。
第二に、彼は開かれた国際経済を支持することにも関心がありませんでした。
実際、彼は、中国やカナダや、ヨーロッパの同盟国に関税をかけることを望んでいます。
国際機関に関しては、NATOは時代遅れだと言いました。
WTOを侮蔑し、EUを侮蔑し、IMFも世界銀行も嫌い、NAFTAも嫌い、TPPも破棄しました。
彼の言動を見れば、その思想が分かります。
彼はこれらのリベラリズムに反対して立候補したのです。
しかし、オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントン、ジョージ・H・W・ブッシュは、冷戦終結後に、リベラリズムを支持しました。
そして、このリベラルな政策は失敗しました、
アメリカの外交政策の失敗がドナルド・トランプを当選させる一助になったのです。
これが、どうしてこんな男がアメリカの大統領に選ばれたのだろう、とおっしゃる方々に対する説明になります。
この国の外交エリートたちは、過去30年間、失敗し続けているのです。

※続き
⑤なぜ、リベラル覇権主義が、外交政策として採用されたのか?
→日本語訳

※注釈
「アメリカの外交政策の失敗がドナルド・トランプを当選させる一助になったのです。これが、どうしてこんな男がアメリカの大統領に選ばれたのだろう、とおっしゃる方々に対する説明になります。」
この講演の後に行われた質疑応答の中で、この発言の真意を問われたミアシャイマーは、「トランプが大統領に当選した理由として大きいのは、外交政策の問題よりも、内政問題だった(外交政策の失敗が大統領当選の主な理由であるとは言っていない)。アメリカの有権者の多くは、国外の問題よりも国内の問題に関心があるから。」と説明しています。それを踏まえて、「アメリカの外交政策の失敗がドナルド・トランプを当選させる一助になったのです。」という訳にしました。

この訳に基づいて製作された動画はこちらです(関連写真も入れているので理解の一助になります)。

※この講演は、下記の著作の内容に基づいています。


●日本語訳一覧

・前置き

①リベラリズム(自由主義)とは何か?

②「リベラリズムは、暴力を引き起こす」という問題に対する解決策

③ナショナリズムとは?

④リベラル覇権主義とは?

⑤なぜ、リベラル覇権主義が、外交政策として採用されたのか?

⑥何が、リベラル覇権主義を推し進めたのか?

⑦リベラル覇権主義は、どのような結果を引き起こしたのか?

⑧なぜ、リベラル覇権主義は失敗したのか?

⑨非自由主義的なリベラリズム

⑩自制的な外交政策について

⑪リベラル覇権主義は、国内のリベラリズムを脅かす

⑫国際政治の未来予測