自制的な外交政策について、手短に話します。
もし今わたくしが、外交政策を実行するなら、決して自制的な外交政策は採用しないので、安心して下さい。
しかし、もしわたくしが90年代初頭からアメリカの外交政策を担っていたとしたら、自制政策を追求したでしょう。
リベラル覇権主義を放棄し、民主主義を世界に広める政策を放棄していたでしょう。
外交政策としてリベラル覇権主義を採用したことが、アメリカが犯した重大な過ちだと思います。
わたくしたちは自由民主主義がどこにでも根付くと思っていたのです。
若い人たちは、フランシスフクヤマの有名な論文『歴史の終わり』を読んだことがないでしょう。
絶対に読むべきです。
冷戦が終わったときに書かれた2つの最も重要な論文は、フランシスフクヤマの『歴史の終わりとチャールズ・クラウトハマーの『一極集中の瞬間です。
基本的にフランシスフクヤマが言ったのは、次のようなことでした。
「我々は20世紀の前半をファシズムの討伐に費やし、後半を共産主義の討伐に費やした」
「その2つの戦いに勝利した今、本当に残っているのは自由民主主義だけだった」
「そして、世界はゆっくりと、しかし着実に、自由民主主義体制へと進化していったのだ。」
そして、フランシスフクヤマは、論文の一番最後に、わたくしたちが、将来直面するであろう最大の問題は、おそらく退屈だと言っています。
なぜ、最大の問題が退屈なのでしょうか?
なぜなら、自由民主主義国家ばかりが存在する世界になれば、平和が訪れるからです。
クラウトハマーは、『一極集中の瞬間』という論文で、次のように書いています、
米国は地球上で最も強力な国家である。
われわれは強大な軍事力を持っているのだから、それを使って自国の利益のために世界を再構築すべきだ。
アメリカは、クラウトハマーの主張とフクヤマの主張を結びつけたのです。
フクヤマは、われわれに有利な方向に風が吹いていると言い、
クラウトハマーは、我々には、そのリベラル覇権主義を拡大していくための、強力な軍事力があると言っていたのです。
そして、アメリカは勝負に出ました。 そして、アメリカはリベラル覇権主義へと乗り出しました。
その結果が、今の惨状なのです。
しかし、当時、もしわたくしが外交政策担当者であったなら、リベラル覇権主義という外交政策を放棄し、
その代わりに、世界のパワーバランスを良好に保つこと(主として中国を封じ込めること)に集中したでしょう。
ところで、わたくしのような現実主義者に期待されていることですが、わたくしが本当に気にしているのは、国家がどのような政治体制を持っているかということではなく、
その国家がどれだけの力を持っているかということです。
アメリカ人としてのわたくしの主要な目標は、アメリカが地球上で最も強力な国家であることを確実にすることです。
すでにお分かりだと思いますが、西半球における覇権国としての地位を確実にすることです。
西半球の地域覇権国となり、更に、ヨーロッパにも東アジアにも湾岸諸国にも覇権国が存在しないようにしたいということです。
わたくしは優位性の重要性について確信しています。
わたくしにとって、優位性の定義とは、国際システムの中で、最も強力な国家になることです。
しかし、だからといって、わたくしは自由民主主義を広めることには興味はありません。
繰り返しになりますが、自由民主主義は素晴らしいものだと思っています。
もし世界中のすべての国家が自由民主主義であれば、その国に住む人々にとっては良いことだと思います、
しかし、わたくしは主権の重要性を確信しているがゆえに、なにを望むかは、その国の人たち次第であると思っています。
※続き
⑪リベラル覇権主義は、国内のリベラリズムを脅かす
→日本語訳
この訳に基づいて製作された動画はこちらです(関連写真も入れているので理解の一助になります)。
※この講演は、下記の著作の内容に基づいています。
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