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なぜ、国際政治を論じる言論人に、これほどまで陰謀論者が多いのか?(その理由を構造的な視点から解き明かします)

国際政治を論じる言論人には陰謀論者が多くいます。
今回は、この理由を構造的な視点から考えてみます。

このことを考える場合、「陰謀論を否定する言論人」というものを想定して、対比させてみると分かりやすいです。
「陰謀論を否定する言論人」を言い換えると、「国際政治学に基づいて、国際政治を論じる言論人」になります。
なぜそうなるのかというと、国際政治学には、国際政治に関する世界で最もレベルの高い研究が蓄積されているので、国際政治を理解する手段として最も信頼性が高いからです。
国際政治を分析する手段としてこれ以上のものはないということです
それは、生物のことを理解したい場合は、生物学から知見を得ることや、機械について理解した場合は、機械工学の知識を利用するのと同じです。

しかし、「国際政治学に基づいて、国際政治を論じる言論人」というものを商品価値という観点からみた場合、「言論人」としては価値がないものになってしまうのです。
なぜなら、言論人の商品価値は、独自(オリジナル)の主張をすることにあるからです。
「国際政治学に基づいて、国際政治を論じる言論人」というのは、「国際政治学に基づいて、国際政治を解説する人」になるので、その道のプロである国際政治学者から直接話を聞いた方がよいということになるのです。
言い換えると、「国際政治学に基づいて、国際政治を論じる言論人」は、オリジナリティーがないだけでなく、その知識レベルが国際政治学者よりも劣るので、商品価値がないということです。

だから、言論人が国際政治を論じる場合、言論人としての商品価値を持ちたいと思うなら(言論人という商売を続けたいならば)、国際政治について、独自の主張をする必要があるということになります。
つまり、国際政治学者とは違う主張をする必要があるということです。
国際政治学者と同じ主張をしていれば、「国際政治学者に直接話を聞いた方がいい」ということになるので、言論人という商売は成立しないからです。
だからといって、言論人は、国際政治学者ではないので、国際政治学の理論に基づいて、オリジナルの国際政治分析をする能力や国際政治学者より優れた分析をする能力はありません。
そのようなことをしようとすれば、国際政治学者ではないので、国際政治学者から間違いを指摘されたりするなどして、ボロが出て言論人としての信用は得られなくなり、言論人の商売ができなくなります。

しかし、国際政治を論じる言論人として生き残れる(おそらく唯一の)方法があります。
それは、陰謀論に基づいて、国際政治を分析してみせることです。

なぜ、生き残れるのかというと、陰謀論は、国際政治学とは別の領域にあるので(=小説と同じようなものなので)、国際政治学者から批判されることもないし、同時に、国際政治学とは全く異なる理論なので、独自色を出すことができるからです。
もし国際政治学者から批判されたとしても、「国際政治学は間違っている」と主張すれば、支持者を失うことはありません。

つまり、陰謀論で国際政治を論じると、専門家から批判されない(=相手にされない)ので、信用が落ちることもないし、オリジナルの言説になるので、言論人としての商品価値を作れるのです。
このように考えると、なぜ国際政治を論じる言論人に、陰謀論者が多いのかの説明がつくのではないでしょうか?
彼らが陰謀論をやめると、言論人としての商品価値を失い失職してしまうのです。

だからこそ、彼らの多くは、「国際政治学者は嘘を付いている」とか、「Foreign AffairesやForeign Policyは嘘ばかり書いている」などと発言しているのでしょう。
そのようなことを言っていれば、「自分たちは、国際政治学とは全く違う次元で国際政治を考えている」ということになるので、オリジナリティーを確保でき、言論人としての商売を続けることができるのです。

商売のために、意図的に陰謀論者になっている言論人もいるでしょうし、また、本気で陰謀論を信じ込んでいる言論人もいるでしょうし、言論人として失職してしまうことを無意識に恐れて、陰謀論を主張している言論人もいるでしょう。
しかし、構造的に見れば、国際政治を論じる言論人であり続けるためには、陰謀論者になる以外の方法はないということは明らかなのです。

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