それに対して、西側にとって、ウクライナは重要ではありません。
だから、西側の人たちが、ウクライナで戦うことを求められることもありません。
あのタカ派の、ジョンマケインでさえ、ウクライナで戦いたいとは思っていないのです。
マケインはウクライナで、アメリカが武力行使することを求めていません。
マケインが言いたいことは、ウクライナは西側諸国にとって重要な戦略的利益ではないということです。
しかし、ロシアにとっては、ウクライナは重要な戦略的利益なのです。
その事を、プーチン以外の他のロシアの指導者たちも明確にしています。
だから覚悟の面で見れば、ロシアに有利です。
スライドをお見せしましたが、西側に天然ガスを供給していることによって、ロシアがどれほどの経済的影響力を持っているかが示されていました。
これらのことを考えれば、この争いは、西側にとっては負けゲームなのです。
しかし、仮に私が間違っているとしましょう。
仮に西側が勝ち組で、プーチンを窮地に追い込み、崖から突き落とすところまで追い詰めることができたとしましょう。
しかし、それが良いことだと思いますか?
ロシアは、何千発もの核兵器を持っている国です。
国家が核兵器を使用する唯一の状況は、自暴自棄になった時(=自国の生存が危うくなった時)です。
西側が優位になるということは、プーチンを絶望的な状況に追い込むということになるのです。
家に帰って、プーチンと核の瀬戸際外交という言葉で検索すれば、この2年間に、いくつもの記事を確認できるでしょう。
プーチンが核兵器の使用に言及しているのは、ウクライナを巡って、西側がロシアの核心的な戦略的利益を脅かしているからです。
繰り返しますが、ロシアには何千発もの核兵器があるのです。
だから、ロシアより優位に立つということは、「ウクライナという土地を巡って、核戦争が起こるかもしれないリスクを冒すことも厭わない立場に身を置く」ということになるのです。
ウクライナは、米国にとって重要な戦略的利益ではありません。
アメリカにとって重要な戦略的利益ではないのです。
※続き
・失敗を繰り返す、アメリカの外交エリートたち
→日本語訳
この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。
●日本語訳一覧
・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)
・本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)
・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?
・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?
・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する
・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する
・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する