「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する(Why is Ukraine the West’s Fault? Featuring John Mearsheimer ミアシャイマー)(全訳)

引用元

プーチンの攻撃的な行動は、「NATOを東方に拡大し、ウクライナとジョージアもNATOに加盟させようとしたことが正しいことであったことを証明している」というのも、よく見かける主張です。
非常に興味深いことは、今回の危機の前の段階では、西側が「プーチンは攻撃的である」と考えていたという証拠がないことです。
「西側が、そのように考えていた」という証拠はないのです。
「ロシアを封じ込めるために、NATOを拡大する」という話もありませんでした。
なぜなら、NATOの拡大は、21世紀の価値観で生きる人たちによって推進されたからです。
何が言いたいのか分かりますか?
プーチンは19世紀の価値観で生きる人間であり、西半球におけるモンロードクトリンと同様、勢力均衡政治という観点から世界を見ています。
しかし、西側の人たちは、21世紀の価値観で生きる人たちです。
だから、ロシアの国境までNATОを拡大しても問題ないだろうと考えていたのです。
ロシアが攻撃を仕掛けてくるとは思っていなかったのです。
その結果、2月22日の後に、今回の危機が勃発したのです。
そして、その後になって初めて、西側は、「ロシアは攻撃的だ」と考えるようになったのです。
2月22日の後になって初めて、西側は「ロシアが大ロシアを作ろうとしている」と考えるようになったのです。
その前は、ロシアをそのようには見ていなかったということです。
ロシアがクリミアに侵攻した時、オバマ大統領と事実上すべてのワシントンの人たちが、「不意打ちを食らった」と思ったのは、それ以前はロシアを危険視していなかった証拠です。
西側がロシアの行動に対して、どのように反応したのかについて少し話します。
西側は基本的に誤った方向に更に踏み込んでいます。
西側はロシアに対してますます厳しい対応をしています。
そうすることが、西側の戦略であると考えているのです。
そして、アメリカ人が望んでいるのは、アメリカがロシアを非難することです。
なぜなら、悪いのはロシアであり、アメリカには非はないし、アメリカは決して悪いことをしないし、
「世界のあらゆる問題は、他の人たちが引き起こしているのであって、決して米国が引き起こしているわけではない」と考えているからです。
なぜなら、「アメリカは善良な覇権国家である」と考えているからです。
「アメリカは善人で、ロシアは悪人であるから、間違った行いをするのがロシアである。だから、ロシアは、大ロシアを作ろうとしているのだ」と考えるのです。
そして、「これは、1930年代の再来だ。」
「プーチンに譲歩すれば、1938年10月のミュンヘンと同じようになってしまう」
「そんなことをさせてはならない」と考えるのです。



※続き
・ロシアの危機感を理解できない西側の対応が、恐ろしい事態を引き起こす
→日本語訳

この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。

●日本語訳一覧

・講演の概要

・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)

本題の理解に必要な前提知識②(欧州の地政学)

本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)

本題の理解に必要な前提知識④(欧州のエネルギー事情)

・ウクライナ危機の原因(概要)

・ウクライナ危機の根本的な原因

・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?

・ウクライナ危機が起こるきっかけ

・ロシアが考えているシナリオ

・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?

・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する

・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する

・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する

・ロシアの危機感を理解できない西側の対応が、恐ろしい事態を引き起こす

・失敗を繰り返す、アメリカの外交エリートたち

・ウクライナ危機の解決策

・ウクライナ危機が各方面に与える影響

・ウクライナの未来