「ウクライナ危機が起こるきっかけ」(Why is Ukraine the West’s Fault? Featuring John Mearsheimer ミアシャイマー)(全訳)

引用元

では、ウクライナ危機を引き起こした直接的な原因とは何でしょうか?
つまり、2014年2月22日のクーデターが起きた原因は何であるのかということです。
これを知ることは非常に重要です。
なぜなら、このクーデターが危機を加速させたからです。
クーデターという言葉の意味について考えてみましょう。
2014年2月22日に起きた、このクーデターはオレンジ革命であり、民主化を推進させることになりました。
そして、重要なのは、「なぜ、クーデターが起きたのか?」ということです。
すべては2013年11月に始まりました。
その時点で、ウクライナのトップであったヤヌコビッチ大統領は、EUとウクライナをより緊密に結びつける協定を結ぶためにEUと交渉していました。
これは、ウクライナを欧州連合に組み込む、もしくは、少し違う言い方をすれば、ウクライナを西側に組み込む方向への一歩です。
ロシア側は、「このようなことは受け入れられない」と明言していました。
ロシア側は、EU、ロシア、IМF、ウクライナを巻き込んだ協定を結ぶことを望んでいました。
ウクライナがEUとだけ協定を結び、ロシアは冷遇されるという考えは、プーチンにとって容認できるものではありませんでした。
だから、プーチンはウクライナに大きな圧力をかけ、ウクライナにとって魅力的な取引を持ちかけました。
ご想像の通り、EUはウクライナに特別な好条件は提示していませんでした。
なぜなら、ウクライナの汚職の多さを知っていたからです。
EUはウクライナの汚職をなくすことを望んでいましたが、ウクライナ人はそれを望んでいませんでした。
そのような状況の中で、プーチンは、「ウクライナがEUとだけ関係を持つというようなことはあり得ない」ということを明確にしただけでなく、ウクライナにとって魅力的な取引を提示したのです。
その結果、ヤヌコビッチは11月21日、EUとの交渉をやめ、そのことが、一連の抗議行動につながりました。
ヤヌコビッチ政権下のウクライナ政府は、このデモに過剰に反応し、デモは制御不能に陥りました。
そして、2014年1月22日、ウクライナで初めて2人の死者が出ました。
これがマイダンデモと呼ばれているものです。
そして、2月18日から2月20日にかけて、多くの人々が亡くなりました。
本当に混乱した状態でした。
そして、ドイツ外相、フランス外相をはじめとする多くの欧州外相がキエフに飛び、ヤヌコビッチを合法的に政権の座から下ろすために、選挙を実施することで合意しました。
しかし、デモ隊はこの取り決めを拒否しました。
デモ参加者の中には、武装したファシスト的な勢力がかなりいました。
そして、マイダンで殺戮が行われました。
その結果、ヤヌコビッチは命からがらロシアに逃亡することになりました。
そして、2月22日のクーデターが起こったのです。
以下がクーデター後の主な出来事です。
2月23日、国会は東部における少数言語法の廃止を決議しました。
この少数言語とは、基本的にロシア語のことです。
そして2月27日、ロシア軍がクリミアで検問所の占拠を開始しました。
28日、ロシア軍はさらにクリミアへの進駐を開始しました。
ロシア軍はクリミアを征服したわけでも、侵略したわけでもありませんでした。
ロシア軍はクリミアに侵攻していません。
ロシア軍は、その前からすでにそこにいたのです。
なぜなら、賃貸契約を結んで、ロシア軍はウクライナからセヴァストポリの海軍基地を借りていたからです。
それ以前から、ロシアはクリミアに軍隊を駐屯させていたということです。
だから、27日に検問所の占拠を開始したのは、すでにそこにいたロシア軍です。
その後、28日にロシア軍がさらに進駐を開始しました。
ロシアが「どのような考えでこのような行動を取ったのか」、そして、「今どのようなことを考えているのか」を考えてみましょう。
ロシアがクリミアを編入するまで、いくつかの出来事がありました。
そして、その直後にウクライナ東部で紛争が勃発しました。
ロシアがウクライナ東部の紛争に関与しているという確たる証拠はあまりありませんが、関与していることは明らかだと思います。
ウクライナ東部の、親ロシア勢力が一定の独立性を維持できるよう、ロシア政府が多大な努力を払っていることは明らかだと思います。
これについてはまた後で話します。

※続き
・ロシアが考えているシナリオ
→日本語訳

この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。

●日本語訳一覧

・講演の概要

・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)

本題の理解に必要な前提知識②(欧州の地政学)

本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)

本題の理解に必要な前提知識④(欧州のエネルギー事情)

・ウクライナ危機の原因(概要)

・ウクライナ危機の根本的な原因

・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?

・ウクライナ危機が起こるきっかけ

・ロシアが考えているシナリオ

・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?

・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する

・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する

・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する

・ロシアの危機感を理解できない西側の対応が、恐ろしい事態を引き起こす

・失敗を繰り返す、アメリカの外交エリートたち

・ウクライナ危機の解決策

・ウクライナ危機が各方面に与える影響

・ウクライナの未来