「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する(Why is Ukraine the West’s Fault? Featuring John Mearsheimer ミアシャイマー)(全訳)

引用元

皆さんが、当たり前だと考えていることは、
プーチンのせいで、この危機が起きたということです。
プーチンは狂っているとか、非合理的だと言われています。
メルケルも一時期このような主張をしていました。
「プーチンは大ロシアを再興しようとしている」とか、
「プーチンは、アドルフヒトラーに酷似している」などと言われています。
そのことについて、反論させて下さい。
私はアドルフ・ヒトラーについてよく知っているし、30年代と第2次世界大戦中のナチス・ドイツの様々なことについて、書いたり教えたりしています。
「プーチンがアドルフヒトラーに似ている」という話は笑止千万です。
まじめな人々がそのような主張をするのは信じがたいことです。
そして、プーチンが大ロシアを復興させようとしているという話についてですが、もし、ロシアにそれができる力があるなら、プーチンはそうしているはずです。
しかし、仮にそうしたいと思ってもできないのです。
ロシアは衰退しつつある大国です
ウクライナに侵攻し、バルト三国に侵攻して大ロシアを作ろうとすれば、棘だらけの場所に飛び込むことになるのです。
実際、ロシアを破滅させたいのなら、「大ロシアを作れ」と言うべきです。
なぜなら、もし大ロシアを作ろうとすれば、際限のないトラブルに巻き込まれることになるからです。
しかし、プーチンは非常に賢いので、そのようなことはせずウクライナを破滅させようとしているのです。
そのことは、はっきりさせておきたいです。
プーチンによるウクライナの破壊には、基本的に西側に対する次のようなメッセージが込められているのです。
「西側がウクライナを手に入れることは不可能だ」
「西側がウクライナを手に入れようとするなら、その前に、ロシアはウクライナをめちゃくちゃに破壊する」。
彼は狂っているのでしょうか?
彼は不合理なのでしょうか?
私はそうは思いません。
彼は非常に戦略的だと思います。
そして、すでに述べたように、彼が危機の主因だとは思いません。

※続き
・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する
→日本語訳

この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。

●日本語訳一覧

・講演の概要

・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)

本題の理解に必要な前提知識②(欧州の地政学)

本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)

本題の理解に必要な前提知識④(欧州のエネルギー事情)

・ウクライナ危機の原因(概要)

・ウクライナ危機の根本的な原因

・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?

・ウクライナ危機が起こるきっかけ

・ロシアが考えているシナリオ

・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?

・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する

・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する

・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する

・ロシアの危機感を理解できない西側の対応が、恐ろしい事態を引き起こす

・失敗を繰り返す、アメリカの外交エリートたち

・ウクライナ危機の解決策

・ウクライナ危機が各方面に与える影響

・ウクライナの未来