「ウクライナ危機の解決策」(Why is Ukraine the West’s Fault? Featuring John Mearsheimer ミアシャイマー)(全訳)

引用元

つまり、私が言いたいことは、「ロシアを追い詰めようとしても、うまく行くとは思わない」ということです。
しかし、もしうまく行ったとしても、核兵器の存在を考えると、それがいいことだとも思えません。
しかし、アメリカがロシアに対して強硬策を取っていることは明らかです。
これは昨年のニューヨークタイムズ紙からの引用で、この危機にどう対処するかについてのオバマ政権の考え方をよく表しています。
我々は、どうすべきなのでしょうか?
私の考えは、「中立のウクライナを作り、NATOとロシアの間に緩衝国家を作るべきだ」というものです。
基本的に私が言っているのは、ウクライナをロシアから引き離し、NATОの一部にし、EUの一部にし、一般的な言い方をすれば、「西側の一部にするという愚かな考えを持つ前の状態」に戻るということです。
アメリカは、ウクライナが中立であり、緩衝国家であるような状況を作り出す努力をすべきです。
単純な、あるいは見方によっては単純化し過ぎであるとも言える地図をもう一度見てみましょう。
これが私の考えるヨーロッパの安全保障です。
皆さんも、同じように考えると思います。
NATОには、フランス、ドイツ、ポーランドを加えたい。
ウクライナには、緩衝国になってもらいたい。
そして、ウクライナの東側にはロシアを配置したい。
西ウクライナがNATОに属し、東ウクライナがロシアに属し、互いに憎しみ合っているロシア人とアメリカ人がドニプロ川を挟んで、睨み合っているような分割されたウクライナは望んでいないはずです。
それは、良い考えではありません。
では、どのように、この目的を達成したらよいのでしょうか?
とても簡単です。
明確にNATОの拡張を放棄するのです。
ところで、NATОの拡張は終わっています。
私は数え切れないほどの政策立案者と話してきましたが、彼らはこのように言います。
「NATОの拡張は、終わった」と。
しかし、我々がしなければならないのは、それを明確に放棄することです。
「それは実現しない」と言うことです。
ロシア、IМF、EUの三者で、ウクライナの経済救済計画を策定しなければなりません。
これはもちろん、2013年にプーチンがやりたかったことです。
EUは愚かにも、それを拒絶しました。
西側は、ウクライナの少数民族の権利、特に言語の権利を保証するために、あらゆる手段を講じる必要があります。
先ほど示した地図を思い出していただきたいのですが、現在ウクライナ国内で起きている対立は、非常に重大な内戦の様相を呈しており、西側がすべきことは、ウクライナ国内の紛争を沈静化させることです。
ウクライナ東部の人々に、多くの自治権を与えなければなりません。
そして、少数民族の権利を保護しなければなりません。
しかし、西側は、このようなことをするつもりがないのです。


※続き
・ウクライナ危機が各方面に与える影響
→日本語訳

この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。

●日本語訳一覧

・講演の概要

・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)

本題の理解に必要な前提知識②(欧州の地政学)

本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)

本題の理解に必要な前提知識④(欧州のエネルギー事情)

・ウクライナ危機の原因(概要)

・ウクライナ危機の根本的な原因

・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?

・ウクライナ危機が起こるきっかけ

・ロシアが考えているシナリオ

・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?

・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する

・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する

・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する

・ロシアの危機感を理解できない西側の対応が、恐ろしい事態を引き起こす

・失敗を繰り返す、アメリカの外交エリートたち

・ウクライナ危機の解決策

・ウクライナ危機が各方面に与える影響

・ウクライナの未来