それでは、本題に入る前にこの危機について理解を深めるために今回の危機と関連する2つの事をまず説明しましょう。
一つ目は、アメリカの核心的な戦略的利益についてです。
核心的な戦略的利益とは「その利益を守るためであれば、戦争で戦って死ぬことも厭わない」という利益のことを言います。
戦略的に非常に重要な西半球以外で、アメリカにとって本当に重要な地域は、3つの地域だけである、と私は考えています。
ヨーロッパと北東アジアとペルシャ湾です。
そして、アメリカが1783年に独立して以来、ヨーロッパが世界で最も重要な地域であり続けたことを理解することが非常に重要です。
日本が真珠湾を攻撃してきたにもかかわらず、アメリカはヨーロッパ第一主義を掲げて戦争に突入しました。
戦争中もずっとヨーロッパ第一主義を貫いてきました。
その主な理由は、ヨーロッパの大国の方が北東アジアの大国よりも、地域覇権を確立する可能性が高かったからです。
ペルシャ湾が重要な地域なのは、そこに石油があり石油は国際システムにおいて非常に重要な資源だからです。
この3つが西半球以外で最も重要な地域であるということです。
そして、アメリカの建国以来ヨーロッパがもっとも重要な地域であり続けました。
しかし、それが今、転換点を迎えつつあるのです。
なぜなら、中国の台頭によって米国にとってアジアが最も重要な地域となるからです。
そして、ペルシャ湾はインドや中国などのアジア地域への石油の供給源なので二番目に重要な地域になるでしょう。
ヨーロッパは、ペルシャ湾よりもかなり重要性が低い3番目の地域になるでしょう。
ヨーロッパが重要だという話は、基本的に過去のものになろうとしています
このことを念頭に置いておいて下さい。
なぜなら、ウクライナ危機はヨーロッパで起きていることであり、NATOと関係がある話だからです。
※続き
・本題の理解に必要な前提知識②(欧州の地政学)
→日本語訳
この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。
●日本語訳一覧
・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)
・本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)
・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?
・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?
・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する
・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する
・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する