ロシアがどのような考え方に基づいて、このような行動を取ったのかを考えてみましょう。
一つ目は、「ロシアはクリミアを奪い、それを返すつもりはない」ということです。
もうひとつは、ウクライナを征服しようとしているのではないということです。
ロシア人が暴れまわり、ソビエト連邦や大ロシアを再興しようとしているなどと言う人がたくさんいます。
しかし、そのようなことは起こりません。
プーチンはそのようなことをするには頭が良すぎるのです。
ロシアがアフガニスタンに侵攻した時のことを覚えていますか?
アメリカがアフガニスタンに侵攻したときのことを覚えていますか?
アメリカとイギリスがイラクに侵攻した時のことを覚えていますか?
イスラエルがレバノン南部に侵攻した時のことを覚えていますか?
そこから得られる教訓は、そのような場所には近づかないほうがいいということです。
本当にロシアを破滅させたいのなら、「ウクライナを征服してみろ」とロシアを煽ることです。
プーチンは、賢いので、そのようなことをしません。
プーチンがおこなっていることは、基本的にウクライナを破滅させることです。
そして、ロシアは、西側に対して、非常にシンプルなことを言っています。
「西側には、選択肢は2つある。」
「ウクライナを緩衝国家とする2014年2月22日以前の状態に戻る」か、「ウクライナを手中に収め、西側の軍事的な要塞とするという策略を続ける」かのどちらかだ。
「後者の場合、ウクライナはめちゃくちゃに破壊されることになる。」
「そして、ロシアはこの紛争を必要なだけ続けるつもりである。」
これが、プーチンが西側に対して言っていることなのです。
事態は、二段階で進展しました。
一つ目の段階は、クリミアの奪取です。
クリミアをNATOの基地にすることはありえないということです。
西側の目標は、ウクライナをNATОの一員にすることですが、ロシアはそれを許さないということです。
クリミアが西側のものになることは、今後もありません。
これが、第一段階に起きたことです。
第二段階は、この紛争を、第一段階で凍結させずに、「ウクライナが西側の一員になることを阻止するために、ロシアがウクライナを破壊する」という新しい段階に入るということです。
プーチンは、西側に対して、「第二段階に入るのか?」というメッセージを送ってきているのです。
ロシアは、なぜこのような攻撃的な姿勢を見せるのでしょうか?
※続き
・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?
→日本語訳
この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。
●日本語訳一覧
・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)
・本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)
・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?
・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?
・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する
・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する
・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する