ロシアは大国です。
そして、大国である以上、ロシアとの国境に接する、ロシアにとって戦略的に重要な国が、西側に取り込まれることを看過することはあり得ません。
このようなロシアの考え方は、モンロードクトリンを掲げるアメリカから見れば、驚くべきことではありません。
モンロードクトリンとは、「基本的に、西半球は我々の裏庭であり、別の地域の大国が西半球に軍隊を進駐させることは許されない」というものです。
聴衆のほとんどの方は、私と同様年齢が高いので、キューバ危機を覚えているでしょう。
ソビエトがキューバに軍隊を駐留させるという考えに、アメリカ人がどれほど激怒したかを覚えているでしょう。
「こんなことは受け入れられない。」
「西半球に軍隊を置くことなど許されない」
これがモンロー・ドクトリンです。
今から20年後、強大な中国がカナダやメキシコと軍事同盟を結び、中国軍をカナダやメキシコに移動させ、
「わたくしたち中国人は皆、20世紀や21世紀の人間であり、中国軍が攻めてくるのではないかと心配するのはプーチンのような19世紀の世界観で生きている人たちだ」と言ったとしても、
アメリカ人が、それを許すはずがありません。
アメリカ人は、冷戦時代にソビエトに対して行ったように、中国に対してもモンロードクトリンを適用しようとするでしょう。
だから、アメリカがウクライナを西側に取り込むという考えに、ロシア人が激怒したとしても驚くべきではありません。
ブカレストサミットでの宣言に対して、ロシアが反発し、その結果、2008年8月に起きたジョージア紛争について話しましたが、
それでも、アメリカはウクライナを西側の一部にしようとし続けました。
それにロシアが反応したのです。
それは驚くべきことではないでしょう。
しかし、オバマ大統領をはじめ、西側のエリートたちはなぜか驚いたのです。
それは彼らが21世紀の人間だからでしょう。
勢力均衡政治は、もはや重要ではないと考えていたからでしょう。
ワシントンの人々やアメリカ人の大多数が、ロシアとの関係に苦労していると思うのなら、中国との関係で起きる問題は、想像を絶するものになるでしょう。
私は中国でとても人気があります。
私は中国によく行くのですが、
その時はいつも、「同胞のもとに戻れてよかった」という話から始めます。
なぜなら、中国にいるときは、ワシントンにいるときよりも知的な面で、くつろいだ気分になれるからです。
北京ではモスクワと同じように、私のような19世紀の価値観で生きている人たちを相手にできるからです。
一方、ワシントンでは21世紀の価値観で生きる人々を相手にしなければなりません。
中国人は、アメリカ人を完膚なきまでにやっつけるつもりでいます。
※続き
・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する
→日本語訳
この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。
●日本語訳一覧
・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)
・本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)
・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?
・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?
・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する
・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する
・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する