次は、ウクライナ危機がなにを引き起こすのかについてお話しします。
これが最後のスライドです
『新たな冷戦は起こるのか?』
起こりません。
ロシアはソビエト連邦ではないからです。
そして、前にも申し上げたように、アメリカは、これまで見たこともないような規模の、潜在的な真の競争相手の出現を目前に控えているのです。
つまり、中国の脅威です。
それが具現化すれば、かつて見たこともないような事態になるでしょう。
アメリカはアジアで手一杯になるでしょう。
ヨーロッパは重要ではなくなり、
ロシアは、アメリカの側に付くことになるでしょう。
中国に対する均衡勢力は、韓国、日本、ベトナム、台湾、シンガポール、インド、そしてロシアになるでしょう。
ロシアはアメリカの側に付くのです。
このことを考えても、今の対露政策は愚かであると言えるのです。
アメリカがやっていることは、事実上、ロシアを中国の軍門に下らせることだからです。
ロシアをアメリカの側に付かせることができれば、素晴らしい戦略が可能になります。
イランの核開発の問題解決には、ロシアが必要です。
アメリカの側に付いたロシアをイランに接近させることによって、イランの問題を解決できます。
シリアの問題でもロシアが必要です。
あらゆる問題でロシアが必要なのです。
今ロシアと争う必要はありません。
冷戦状態に戻る必要などないのです。
『米国はアジアに軸足を移すつもりか?』
そうです。
アメリカには、アジアで大きな危機が起こるだけで手一杯になります。
新聞を読んでいれば、遅かれ早かれ南シナ海で衝突が起きることが分かるでしょう。
もし衝突が起きれば、アメリカは、アジアに注意を集中することになります。
ロシアは真の競争相手ではないのです。
ウクライナ危機は、NATОにとってどのような意味を持つのか?
前の論点に戻りますが、わたくしは、NATОは深刻な問題を抱えていると思うし、アメリカはアジアに軸足を移すと思うので、いずれ同盟としての機能を失うことになると思います。
ウクライナ危機は、アジアの同盟国にとってどのような意味を持つのか?
これは非常に興味深い質問です。
わたくしは2014年12月に日本に滞在していました。
日本人は、アジアの多くの人たちと同じように、第一に、「アメリカは自分たちのためにアジアにいてくれるのだろうか」と疑問に思っています。
なぜなら、ウクライナでアメリカがトラブルを起こしているのを見ているからです。
アメリカがISISに喧嘩を売っているのを見ているからです。
米国がISISと戦い、ウクライナでロシアとやり合っているのであれば、彼らは次のように言うでしょう。
「アメリカは、アジアに軸足を移すことができるだろうか?」
「そして更に言えば、たとえ米国が軸足を移したとしても、彼らを信用できるのだろうか?」と
ワシントンの外交関係者たちが、どのように動いているかを見れば、まともな射撃もできない一団のように見えます。
そのような人たちに、日本人は頼ろうと思うでしょうか?
もしあなたが日本人で、アメリカの安全保障の傘、特にアメリカの核の傘に頼っているとしたら、尖閣諸島を巡って中国と衝突した時に、アメリカに頼ることができるだろうか?」と首をかしげるのではないでしょうか?
現在のアメリカの外交政策は、アジアの同盟国との関係を考えても、良いことではないと思います。
『ウクライナ危機は、イランとシリアにとって、どのような意味を持つのか?』
これからどうなるのかは分かりませんが、
イランの問題に関して、ロシアが必要だし、
シリアの問題に関しても、ロシアが必要です。
しかし、棒でロシア人の目を突くようなことをし続ければ、ロシア人は、アメリカに対して報復を考えるようになるでしょう。
そして、そのようなことをし続ければ、イランの問題でロシアがアメリカに協力しなくなっても、わたくしは驚きません。
そうなれば、イランと交渉することが、できなくなります。
そして、そうなった時、ロシアがどう動くのか、制裁措置を維持する気があるのかどうかは興味深いところです。
シリアはご存知のように大混乱です。
もし解決の見込みがあるとするならば、ロシアが関与した場合になるでしょう。
しかし、ウクライナを巡る状況を考えれば、ロシアから多くの協力を得るのは難しいでしょう。
クリミアは永久にロシアに奪われたままなのか?
そうなります。
ウクライナ危機は、ウクライナにとってどのような意味を持つのか?
これについては、いろいろな意味で、わたくしの話の中で最も重要な部分になります。
残りの2~3分で、このことについて話します。
※続き
・ウクライナの未来
→日本語訳
この訳に基づいて製作された動画はこちらです(論文からの引用や関連写真も入れているので理解の一助になります)。
●日本語訳一覧
・本題の理解に必要な前提知識①(アメリカの核心的な戦略的利益とは?)
・本題の理解に必要な前提知識③(ウクライナとはどのような国なのか?)
・ウクライナを西側に取り込むために、米国が使っていた戦略とは?
・なぜ、ロシアは「ウクライナが西側の一員になることは、安全保障上の脅威である」と考えるのか?
・「プーチンが狂っているからウクライナ危機が起きた」という主張を論駁する
・「アメリカは善良な覇権国家なのだから、プーチンがNATO拡大を脅威だと考えるのは間違っている」という主張に反駁する
・「プーチンは以前からウクライナ征服を計画していたのであって、NATOの東方拡大がウクライナ危機を引き起こしたという話は間違い」という主張に反駁する